第三の男

しばらくぶりの鑑賞だったけど、サスペンス映画としての完成度の高さに改めて舌を巻く。社会秩序の混沌が生む正義と道徳の倒錯。それを象徴するかのようなウィーンの地下水道。ハリー・ライムを悪と知りながらも自身の愛を貫くアリダ・ヴァリ。混沌の中成り上がる亡霊、オーソン・ウェルズ。で、これらの芸術映画然たる要素を差し置いて、観客の心を掴んで離さないストーリーテリングの妙。名作は名作なのです。ただ、オーソン・ウェルズの語る「500年の民主主義と平和は何を生んだ?鳩時計さ!」というセリフは、歴史的名台詞ではあるけれど、改めて考えるとかなり中二クサい。