映画

運動靴と赤い金魚

今まで観る機会が無かったのが不思議なぐらいの傑作だった。兄妹がお互いを思いやる様のいじらしさ、過多に感傷的でない演出、それゆえに生まれる様々なドラマの現実感。ラストのマラソン大会での二人の走る姿がもたらす感動は久しぶりの感覚だった。ネオリ…

第三の男

しばらくぶりの鑑賞だったけど、サスペンス映画としての完成度の高さに改めて舌を巻く。社会秩序の混沌が生む正義と道徳の倒錯。それを象徴するかのようなウィーンの地下水道。ハリー・ライムを悪と知りながらも自身の愛を貫くアリダ・ヴァリ。混沌の中成り…

花様年華

ウォン・カーウァイと聞くと、どうしても『欲望の翼』とか『恋する惑星』のイメージが先行し『ブエノスアイレス』以降の作品を食わず嫌いでいたせいで、どういうわけか未鑑賞のままだった『花様年華』を劇場で初鑑賞。結果、かなり強くノックアウトされた模…

The Dark Knight Rises

歴史に残るトリロジー バットマン・ビギンズ、ダークナイトに続く新生バットマンシリーズの最終章。作品に対する期待値はここ数年の映画界でダントツにトップであり、その状況下で続投、なおかつ期待を裏切らないクオリティで撮りきったノーランは、映画史に…

The Queen of Versailles

リゾート地経営とタイムシェア・ビジネスを成功させたビリオネアのデイビッド・シーゲルは、アメリカ国内最大級の一軒家を建設中である。外観はヴェルサイユ宮殿のそれを模し、内装もヨーロッパの古城のような超豪邸である。彼の妻は元ミス・アメリカで、現…

Oslo, August 31st

薬物リハビリセンターに入所している青年、アンドレは、仕事の面接の為一日だけオスロの町へ赴く事を許される。中毒を克服したと自覚してはいたものの、自身の経歴に対する劣等感が災いして、面接に失敗してしまう。その後古い友人と再会する内、愛欲と誘惑…

508

映画にとって、観客および彼らのリアクションは映画本編と同様に重要なんだなあと改めて。 なぜなら、劇場内の空気というのは映画鑑賞者の心理を操作する非常に大きな外部要因だから。映画に対して抱くあらゆる種類の感情 - 笑い、哀しみ、切なさ - を見知ら…

本末転倒

テレビ東京で『シーナ』ていう洋画見たけど、ありゃ酷い。80年代のアメリカ映画のダサさに加えて、突っ込みどころ満載の骨抜き設定。あとで調べたらゴールデン・ラズベリー賞にノミネートされていたらしい。80’sとはいえ、最低限の見識はあったのですね。…

暴力脱獄

生板尾見ちゃった。気まぐれで板尾創路の脱獄王観に新宿行ったらトークショーのチケットが余ってたので。映画自体は、板尾が好きな人なら観て損は無いと思う。バイオレンスと微グロな世界が板尾映画で観れた事は嬉しい驚きだった。普段テレビでは見る事の出…

2001年、宇宙の旅

2001年宇宙の旅三度目にして劇場での鑑賞は初。大画面もさることながら、その音響が家庭のテレビとは比べものにならない。映画は映画館で観ないといかんと改めて思う。 タルコフスキーが、ただの技術の展覧会と批判した2001年だけど、それを念頭において…

狂乱怒濤

博士の異常な愛情ことDR.STRANGELOVEを観ました。二度目ですね。 この映画に関してはもう語り尽くされているので、今更何を書いても野暮なだけです。しかしながら、どうせ何を書いても繰り返しになるからといって、誰も新たに語ろうとしなければ映画は古くな…

温故知新

「アタラント号」を観た。1934年制作。28という若さで夭折したジャンヴィゴの遺作である。もっとも、長編作品は2本しかとっていないのだが。”映画史を語る上では欠かせない”と言われながら知名度が低く、しかも同時代のドイツ表現主義のせいで今ひとつ存在…