風姿花伝

昔は勉強の時は無音が好きだったのだが最近は音楽をつけるようにした。しかしもともと音楽をあまり聞かない、素養も無いので、同じ音楽ばかり聞く嵌めに陥り、すぐに飽き、しだいにレパートリーが減っていく。同じ靴ばかり履いていると汚れるスピードが半端無く早いのと同じですな。ここ最近も例に漏れず、新鮮な気持ちで聴ける曲が少なくなっていたのだが、そんな中久々に『ニコニコ動画流星群オケ.ver』を聴いた。で、泣いた。
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初めて聴いたのは去年の今頃だったと思う。各々マスク及び変装を施したオーケストラに、所見の時はただ笑ってみていただけだったのだが、今見るとこれが何にも増して奥ゆかしく、涙が出る。これだけの技術を持った人間が集まっているのに、誰一人自分の顔を明かさない。特技をみせる=自分を売る、という価値観で生きているアメリカ人ではあり得ない行為だ。実際のところはプライバシーの面で顔を隠している人が殆どなのだろうけど、自己主張の激しい価値観に焦燥しているところでコレを見ると、その慎み深さが実に温かい。世阿弥の「秘すれば花」の美意識は、こんな形でまだ脈々と残っているんだなぁ、と身にしみて思った連休最後の夜でした。